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おきつね・エンカウント
ぽつん。と、優那は佇みながら、森の秘密の場所で、はじめて出会った彼を見つめる。シャボン玉をふくことをやめ、目の前に居る動物に驚いていたのだ。
頭の回転がよさげにも見える、眼鏡をかけた、賢そうな。けれど、どこか胡散くさいキツネが一匹。
「お嬢さん、さみしそやなぁ」
こんなとこで何しとんの。しかも喋るのだから、更に驚いた。しかし、逃げ出そうという考えにはいきつかず、問いかける。
「あなた、喋れるの?」
「キツネが喋ったら、あかん?」
「別にそういうわけじゃないけど……。変わってるね。眼鏡かけてるんだ」
「変わってるのは、お嬢さんのほうやろ」
学校行っとる時間ちゃうの、今。そう言うキツネに、優那はまた驚いた。キツネが人間の通う学校のことを知っているなんて、驚きだ。
そう思いつつも、少しだけ目を伏せて少し黙った後に、答える。
「行きたくないから、いいの」
「なんで?」
「……」
「……」
「なんでも」。優那は草原に座り、再びシャボン玉をふくことを始める。それを見ていたキツネは少し首を傾げたが、隣に来てちょこんと行儀よく座った。
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