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キツネは、優那のことを知っていた。どうして知っているのかはわからなかった。優那が家に帰っている間に人間に戻っているからか、それともキツネの姿でありながら、情報を入手するすべをがあるからか。色々なことが浮かんだが、優那は驚いていた。
キツネは、自分が制服姿で森に来ることを、出会ったとき以外に聞いたりしてこなかったからだ。今、何故かそれをやめて問いかけている。少し、ショックでもあったが、優那は言う。「それとこれとは、話が別でしょ」立ち上がり、携帯を握りしめて訴える。「人間に戻ろうよ」
「あなたを生んでくれた、お父さんお母さんも、周りの友達も、きっと心配してる」
「それ、そっくりそのまま自分に返す」
「さっきも聞いた! わ、私はどうでもいいの。自業自得で学校に行けなくなったから。もう、私の居場所なんてない。でも、あなたにはあるでしょ」
「最初から諦めて、居場所がないって決めつけて」
キツネは少し振り返って言う。「居場所なんてどこにでもあるやろ」、それを見つけようとしてないだけ。見つけないヤツは。
「ただの怠け者や。」
──。
『 卑怯者 』
言葉が、ふたつ。優那にのしかかる。
次第に、正論過ぎる言葉に、優那は涙を浮かべて打ち震え出す。彼は、彼だけはわかってくれると思っていたのに。
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