シャボンファンタジック

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シャボンファンタジック

 学校に着くと、優那はトイレへ向かおうとしたが、教室移動の生徒が居て慌てて物陰に隠れる。今は、ちょうど休み時間が終りそうな時だった。どうしようか。そう思い、悩んだが、屋上になら、昼休みでもないし、きっと誰も居ない。階段を上がる。案の定、その場に人の気配はなかった。優那は扉をそっと閉め、外から鍵をかけてふらふら歩く。少し、シャボン玉がふきたい気分だ。そう思い、給水タンクへ上がる手前の手すりに座り、ごそごそとシャボン液を取り出して、ストローに付けて。ふきだす。    風が、少しだけ強い。優那はシャボン玉をふいて空へ行く姿を見送るたび、涙がとまらなかった。やがて、彼らは消えてしまう。ほら、今も消えた。もう、キツネとは話せないし、逢うことも出来ないと思うと、胸が張り裂けそうで。   「う……うう」    声を漏らし、今までの非日常が全て夢だったかのように感じ、涙を零したとき。   「なんで、あんたが居んの?」  ──。奥のフェンス傍で隠れてサボッていた、クラスメイトの男女4人が目の前に立っていた。
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