10 ― 触れる海月の骨

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「それなら同い年ですね、俺たち」 「あ、そうなんですか」 「よし。敬語、やめよう」 「はあ……」 やめるもなにも、もうこれきり会うこともない。 どちらでもいい。 「ゆきりんって小さい頃なに見てた? アニメとか漫画とか」 ぎょっとして、ナイフを握る手の加減が狂った。 真っ二つになった半熟玉子がじわじわとお皿を真っ黄色に侵食していく。 ゆきりん。ゆきりんって、この男。 「ゆきりんは、そういうのは見ない人?」 「いえ、そういうわけじゃ」 「駄目だよ、ゆきりん。敬語やめようって言ったじゃん」 お前がな。勝手にな。 ざくざくとフォークでレタスを刺しながら、口には出さずにツッコミを入れる。 「で、ゆきりんの好きなアニメは? 漫画は?」 「言っても、わからないと思い……思うよ」 「お、セーフ。タメ口で言えたね」 にこにこと笑みを浮かべ、詩優さんはきれいにガレットを食べ進める。 無礼だけどナイフの使い方は上品だ。余計に腹が立つ。
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