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「な、なにも……。なにも、してない」
「俺のハンカチ握りしめて、なにしてたの」
「違います、これは」
「呼んでたよね、名前」
「よ、呼んでないっ」
首をふるふると左右に揺らした。
解放して。赦して。
そんな気持ちで縋るように、違う。違うの、と喘ぐように繰り返す。
説得力はまるでなくて、視界は潤みはじめた。
こんなの、気持ち悪いに違いない。
嫌がられる。拒絶される。
恋人ごっこの域をあまりにも超えた行為。
「ちが、う……」
力なく漏らすと、そっと目尻を拭われた。
あたたかい指先に、張りつめていた糸をふつりと切られる。
「かわいいことするな、君は」
本当に、この男はかわいいしか言わない。
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