9 ― それはあたらよ

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――かわいい。由紀ちゃんが一番、かわいい。かわいい、かわいい変態。 あんなところを見られて拒絶されると思ったのに、この(ひと)は拒絶するどころか、いつもよりも丁寧にわたしを愛でた。 髪の毛先も、耳の淵も、耳朶の産毛も、小指と皮膚のわずかな隙間までも。 すべてをくまなく愛でられる。 そしてそれをずっと待ちわびていたかのように、わたしの躰はひどく悦んだ。 ひどく素直に、ひどく乱れて。 ソファーの上で跳ねる背中。 キスをねだるように首に絡みついた腕。 獣の肌の上を泳ぐ指先。 キスをするたびに触れる眼鏡が煩わしい。 無意識に、眼鏡の縁に指先がのびる。 「邪魔だった?」 問いかけに頷くと、邑木さんは自分で眼鏡を外しはじめた。 わたしの指先は眼鏡からシャツへと流れるように移る。 さらりとした生地のシャツ。だけどボタンは固くて、なかなか外れない。 煩わしさがぐんぐん募る。 半ば力づくでボタンを外すと、邑木さんがしきりに(まばた)きしていた。 眼鏡を外して幼くなっている顔の幼さが増す。 こんな顔も、するんだ。
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