9 ― それはあたらよ

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「由紀ちゃん、どうしたの。こんなこと、いままでは」 「おかしい、じゃないですか。いつも、わたしだけが……脱がしてもらうのって。 だから。平等じゃ、ないから」 この状況に平等という言葉は、あまりにそぐわなかった。 だけど他にうまい理由も浮かばなかった。 ふっと笑った邑木さんが顔を寄せる。 「そうか。戻ってきて、よかったな」 眼鏡なしで交わす口づけは、遮るものがなにもなかった。 微かに揺れる睫毛の気配を、瞼で感じる。 上唇がほどけ、下唇が邑木さんを受け入れ、舌が溶けていく。 思考も視覚も、すぐに覚束なくなった。 衝動と理性と胸の高鳴りがぶつかり合って、理性だけがはらはらと剝がれ落ちる。 「あたらよって、こういうことなんだろうな」 ふっと微笑んだ邑木さんが呟いた。 「あたら、よ?」 「そう。あたらよ」 「どういう意味ですか」 邑木さんはやっぱりふっと微笑み、質問に答える代わりに、今夜もわたしをくたくたにとろけさせた。
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