65人が本棚に入れています
本棚に追加
「由紀ちゃん、どうしたの。こんなこと、いままでは」
「おかしい、じゃないですか。いつも、わたしだけが……脱がしてもらうのって。
だから。平等じゃ、ないから」
この状況に平等という言葉は、あまりにそぐわなかった。
だけど他にうまい理由も浮かばなかった。
ふっと笑った邑木さんが顔を寄せる。
「そうか。戻ってきて、よかったな」
眼鏡なしで交わす口づけは、遮るものがなにもなかった。
微かに揺れる睫毛の気配を、瞼で感じる。
上唇がほどけ、下唇が邑木さんを受け入れ、舌が溶けていく。
思考も視覚も、すぐに覚束なくなった。
衝動と理性と胸の高鳴りがぶつかり合って、理性だけがはらはらと剝がれ落ちる。
「あたらよって、こういうことなんだろうな」
ふっと微笑んだ邑木さんが呟いた。
「あたら、よ?」
「そう。あたらよ」
「どういう意味ですか」
邑木さんはやっぱりふっと微笑み、質問に答える代わりに、今夜もわたしをくたくたにとろけさせた。
最初のコメントを投稿しよう!