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「じゃ、食べましょうか。なんか写真で見たより小さいですけど」
声のトーンを落としながら言った詩優さんに、わたしは心の中で頷く。
クリーム色のお皿には真四角のガレット。
狐色の生地もとろとろの半熟玉子もおいしそうだけれど、お腹にはまったくたまらなさそうだな、と見た瞬間に思った。
なんか人気みたいだから。ガレットが旨いらしいですよ。
そう言って詩優さんに連れられた、パリ風のカフェ。
いかにも写真映えしそうな料理に、猫足のアンティーク調の椅子。
テラス席までびっしりと埋まっている客のほとんどは若い女性だ。
もし邑木さんがここにいたら浮くだろうけれど、詩優さんはしっくりとこの女性特有の空間に馴染んでいる。
こういうところも、ひーくんに似ている。
もしかしたら、気づいていなかっただけで、ひーくんも目の奥までは笑っていなかったのだろうか。
わたしが自分の都合にいいように、補正をかけたフィルターを通していただけで。
綻びは、いつからはじまっていたのだろう。
どの時点に戻れば、やり直せるだろう。
そう思ったけれど、「いつから」もわからないようなわたしは、時間を戻せたとしてもうまくはやれないだろう。
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