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「俺、けっこうオタクだよ。わかるかもしれない」
「わたしのことより、詩優さんは? どんなの見てまし……見てた?」
もちろん興味があるわけではない。
彼にしゃべらせて、あとは適当に相槌をとってやり過ごそう、と思って訊いた。
こういうタイプにはとにかく話題を振って、しゃべらせておけばいい。
下手にこちらの情報を与えれば、遠慮なくどこまでも土足で踏み込まれるに違いない。
「呼び捨てでいいよ。詩優で。あ、兄さんが嫌がるかな」
「それはないと思う」
そう口にしてから、はたと気づく。
余計なことを言ってしまった。
「じゃあ、詩優で」
「はあ……」
「俺が好きだったのはね」
詩優さんはつらつらとアニメや漫画のタイトルを挙げていった。
わたしの世代なら誰もが知っているような有名作品ばかり。
やっぱり彼にわたしのバイブルはわかるまい。
「まあ、でも一番の名作漫画は喧嘩の花道だけど。あれを超える名作はないと思う」
「えっ……」
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