10 ― 触れる海月の骨

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「俺、けっこうオタクだよ。わかるかもしれない」 「わたしのことより、詩優さんは? どんなの見てまし……見てた?」 もちろん興味があるわけではない。 彼にしゃべらせて、あとは適当に相槌をとってやり過ごそう、と思って訊いた。 こういうタイプにはとにかく話題を振って、しゃべらせておけばいい。 下手にこちらの情報を与えれば、遠慮なくどこまでも土足で踏み込まれるに違いない。 「呼び捨てでいいよ。詩優で。あ、兄さんが嫌がるかな」 「それはないと思う」 そう口にしてから、はたと気づく。 余計なことを言ってしまった。 「じゃあ、詩優で」 「はあ……」 「俺が好きだったのはね」 詩優さんはつらつらとアニメや漫画のタイトルを挙げていった。 わたしの世代なら誰もが知っているような有名作品ばかり。 やっぱり彼にわたしのバイブルはわかるまい。 「まあ、でも一番の名作漫画は喧嘩の花道だけど。あれを超える名作はないと思う」 「えっ……」
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