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「えっ、てなに。ゆきりん、喧嘩の花道をディスる気?」
「いや、そうじゃなくて」
「ていうか、ゆきりんって喧嘩の花道知ってるんだ」
「知ってるもなにも」
スマートフォンの画像フォルダを開き、詩優さんに画面を向けた。
薄茶色の瞳がみるみる大きくなる。
「これって作中に出てくる、あのあんぱんだよね? え、買いに行ったの?」
こくりと頷くと、すげえ! と詩優さんは声を上げた。
店内の客がいっせいにこちらを見る。
「あ、すいません。失礼しました」
詩優さんはさっと立ち上がり、ぺこぺこと頭を下げた。
つられてわたしも立ち上がり、頭を下げる。
いったいこれはなんの罰ゲームだろう。
席についてふう、と短く息をつくと目が合った。
同時に軽く吹き出し、漂っていた空気がとたんに変わった。
「びっくりした」
「わたしも、びっくりした」
「でも、なんでゆきりんが? ごりごりのヤンキーの喧嘩漫画じゃん。
それにけっこうマイナーっていうか。あ、男の影響で読んだとか?」
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