10 ― 触れる海月の骨

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「えっ、てなに。ゆきりん、喧嘩の花道をディスる気?」 「いや、そうじゃなくて」 「ていうか、ゆきりんって喧嘩の花道知ってるんだ」 「知ってるもなにも」 スマートフォンの画像フォルダを開き、詩優さんに画面を向けた。 薄茶色の瞳がみるみる大きくなる。 「これって作中に出てくる、あの(・・)あんぱんだよね? え、買いに行ったの?」 こくりと頷くと、すげえ! と詩優さんは声を上げた。 店内の客がいっせいにこちらを見る。 「あ、すいません。失礼しました」 詩優さんはさっと立ち上がり、ぺこぺこと頭を下げた。 つられてわたしも立ち上がり、頭を下げる。 いったいこれはなんの罰ゲームだろう。 席についてふう、と短く息をつくと目が合った。 同時に軽く吹き出し、漂っていた空気がとたんに変わった。 「びっくりした」 「わたしも、びっくりした」 「でも、なんでゆきりんが? ごりごりのヤンキーの喧嘩漫画じゃん。 それにけっこうマイナーっていうか。あ、男の影響で読んだとか?」
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