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そんなふうに手に汗握って開いた扉の先は、図書館のように静寂で清潔で、それぞれがきちんと守られていた。
ひとりひとりパーテーションで区切られ、お互いの顔の見えない待合スペース。素っ気ないわけでも満面の笑みでもなく、静かに対応する受付けの女性。真っ白な空気清浄機は規則正しく透明な空気を吐き出した。
粛々と問診票を埋めて受付けへ持っていくと、名前で呼ばれるのと番号で呼ばれるのではどちらがいいか訊かれ、番号でお願いします、と答えた。
バッグのなかの文庫本を開く気にはなれず、ただ座って診察の順番を待った。大丈夫、大丈夫。相手はプロなのだから、と繰り返し言い聞かせながら。
そうして番号を呼ばれて診察室に入ると、そこは薄暗く、まるで上映前の映画館のようにひっそりと静まり返っていた。もちろん、そこに娯楽性はないけれど。
「佐倉由紀さんですね」
立ち尽くしたわたしに、癖のない顔をした先生は癖のない声で挨拶した。
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