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「自分で。自分で見つけて、自分で読んで、自分で好きになったの。自分で」
男の影響、の一言にカチンときて、「自分で」を繰り返した。
ひーくんはむしろその漫画が嫌いだった。
喧嘩シーンや口汚い言葉は、たとえ漫画でも無理。
そう言っていた。
その言葉で、ひーくんは本当に芯から穏やかな人なのだな、と思ったけれど、それは大きな間違いだった。
ひーくんはわたしに手を上げたりはせずに、だけど確実に傷つくことでわたしを打ちのめした。
喧嘩シーンの方がよほど上品だ。
「いやー、はじめて女の子の同胞に会ったわ。すげえ」
仲間だとか同じ趣味の人とは言わずに、同胞、と表現するところに笑ってしまう。
詩優さんは少しだけ早口になった。
「男だってあんまり知ってる人いないよ。なにその漫画? って言われるもん。
貸したりもしたけど、絵が古いとか無理って言われてさ。名作なのに。
でも、そっか。ゆきりんも好きなんだ。うわあ、なんか感動した。ぐっときた。すげえ」
邑木さんと同じことを言われた。
目の奥がちゃんと笑っている。
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