10 ― 触れる海月の骨

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二人とも食べ終えてレジへ向かっていると、詩優さんは「いいよ、ここは俺が出すから。ゆきりんは外で待ってて」と言った。 「わたしも半分出す」 「いや、俺が誘ったし」 「そういうわけには……あっ」 うっかり財布を落とすと、適当に挟んでいたカード類がばらばらと床に散らばった。 ちゃんと整理しておけばよかった。 硬貨でないだけよかったけれど、恥ずかしい。 しゃがんで必死にカードをかき集めるわたしを、詩優さんが手伝う。 「ご、ごめんなさい」 「また敬語になってるし。 にしても、あれか。ゆきりん、けっこうドジっ子か」 「ドジっ子って」 「ドジっ子でしょう。これは」 散らばったカードの最後の一枚に手をのばすと、横からのびてきた詩優さんの手に触れた。 ひーくんと同じ、つめたい手。 ぱっと手を離すと、今度は視線がぶつかった。 困ったような顔で笑われる。 「ほら、ドジっ子は早くあっち行って」 手の甲でしっしっと追い払われ、けっきょく詩優さんがカフェ代を支払った。
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