65人が本棚に入れています
本棚に追加
二人とも食べ終えてレジへ向かっていると、詩優さんは「いいよ、ここは俺が出すから。ゆきりんは外で待ってて」と言った。
「わたしも半分出す」
「いや、俺が誘ったし」
「そういうわけには……あっ」
うっかり財布を落とすと、適当に挟んでいたカード類がばらばらと床に散らばった。
ちゃんと整理しておけばよかった。
硬貨でないだけよかったけれど、恥ずかしい。
しゃがんで必死にカードをかき集めるわたしを、詩優さんが手伝う。
「ご、ごめんなさい」
「また敬語になってるし。
にしても、あれか。ゆきりん、けっこうドジっ子か」
「ドジっ子って」
「ドジっ子でしょう。これは」
散らばったカードの最後の一枚に手をのばすと、横からのびてきた詩優さんの手に触れた。
ひーくんと同じ、つめたい手。
ぱっと手を離すと、今度は視線がぶつかった。
困ったような顔で笑われる。
「ほら、ドジっ子は早くあっち行って」
手の甲でしっしっと追い払われ、けっきょく詩優さんがカフェ代を支払った。
最初のコメントを投稿しよう!