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本屋に向かいながら「さっきのお金だけど」と言っても、詩優さんは聞く耳をまったく持たず、ヤクザ漫画について身振り手振りで熱く語った。
暖簾に腕押しどころか、空気に腕押し状態。
高い熱量に圧倒される。
オタクと言っていたのは大袈裟ではなかった。
「あ、あった。全巻揃ってればいいんだけど」
本屋につくと、詩優さんは次々と本棚から単行本を抜き出していった。
ギラギラした絵柄に「任侠」の文字。
確かにおもしろそうだな、と思っていると、ゆきりん手伝って、と声をかけられた。
わたしの腕の中も、詩優さんの腕の中も、単行本でいっぱいになった。
落とさないように慎重にレジへ向かう。
「俺、ゆきりん送ってくわ」
「え?」
「これ、ゆきりんが一人で持って帰るのはきついでしょ。俺が兄さんちまで持ってく」
「どうして邑木さんのマンションに持っていくの」
「これ、半分はゆきりんのだから」
「わたしの?」
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