10 ― 触れる海月の骨

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「わたしも持つよ」 「俺、いちおう男だよ。兄さんと比べたら頼りなく見えるかもしれないけど」 「でも」 「じゃあ、そろそろ帰りますか。あ、あれも買っておけばよかったな。忘れてた」 「あれ?」 詩優さんはレジの近くの月刊誌を指した。 若い女性向けのライフスタイルマガジン。 彼がそれを読むのは意外だった。 「そういうの読むんだ」 「や、ゆきりんにあげようと思って」 「なんで?」 わたしはすっかり敬語の抜けた軽い口調で訊ねた。 「兄さんが載ってるから」 「邑木さんが? なんで邑木さんが雑誌に?」 「なんでって」 ゆきりん、知らないの? そう言って、詩優さんはまちのパンやさんの正体を告げた。
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