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壁一枚分の隔たりがあっても、母たちの会話はじゅうぶん過ぎるほどよく聞こえた。
「それにしても困ったわねえ。あなた達の結婚式までには由紀が定職に就いてないと、よくないわよねえ。そちらのご両親がどう思うことか。姉がそうだと、妹の美紀の印象まで下がっちゃうでしょう?」
「そんなことないですよ、お義母さん。それにうちの家族、みんな美紀ちゃんが大好きですから」
「由紀ったら急に会社を辞めて。浮いた話のひとつもないし。わたしがあの子の年のときには、もうあの子を産んでたっていうのに」
「またその話? 大丈夫、大丈夫。あたしがそのぶん赤ちゃんいっぱい産むから」
「美紀ちゃん、お義母さんの前でそういう話は」
「だあって。あたし、三人は欲しいもん。お家だって広いから、部屋はじゅうぶんあるし。早くお家、完成しないかなあ」
「あなた達のために新居まで用意してくれるなんて、素敵なご両親よね。美紀はいい結婚ができたわね」
「ふふっ。あたしがお姉ちゃんの運までもらっちゃったみたいで悪いなあ」
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