2 ― 感情のまにまに【6.5 更新】

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 妹が笑い、母が笑い、石井さんが隙間風のように笑った。  妹はウェディングハイとマタニティハイのダブルハイで、母は「お前が花嫁か。お前が妊婦か」とツッコミたくなるくらいに妹を上回るハイで、石井さんは気遣いで場を崩さないために笑っただけ。  そう、それだけ。たったそれだけのこと。  それだけなのに、わたしはすぐさま二階に上がって電話をかけていた。呼び出し音が心臓を叩き、どくどくと全身を流れる血の勢いが増す。  だけど相手は電話に出なかった。  そもそも向こうはわたしの番号を知らないし、わたしが電話をかけるとも考えていないだろう。あれから一週間以上が経っている。  それか、いわゆる運命の神様のようなそういうなにかが、わたしとその人を結びつけないようにしているのかもしれない。  繋がらないということは、とにもかくにも縁がない。やめておけのサイン。  わずかに後ろ髪を引かれながら電話を切った。机にスマホを伏せると、スマホを握りしめていた手のひらが汗ばんでいたことに気づいた。汗はたちまち冷えていった。  酸素が、薄い。
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