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数日後。
ヒトミンの快気祝いを兼ねて私は三宮のカフェでランチをすることにした。
「ヒトミン、風邪治ったんだ」
「まあね。まだ少し鼻声だけど、アタシは至って健康よ」
「大体さ、あの寒空の下で野外フェスに行こうっていうほうが間違っているんだよ。そもそもの話冬フェスって屋内が多いだろ。レディクレとか」
「仕方ないじゃん。好きなバンドが出ていたんだから」
「じゃあ、仕方ないか。推しのいる生活は大事だからな。でも、健康にも気をつけるんだ」
「はいはい。分かりました。ところで、あの宝くじは結局どうなったんだ」
「芦屋署の話によると、被害者の遺族に返されたらしい。まあ、100万円は葬儀代に消えるだろうけど」
「そんな使い方、アタシは厭だな」
「矢っ張りそうだよね。宝くじぐらいド派手に使わせてほしいもんだ」
なんだかんだで、ヒトミンと談笑している時が一番楽しい。そう思いながら、私は今日もこうやってしょうもない話をしているのである。
――その日のヒトミンの顔は、少し幸せそうに見えた。
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