3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
第1話 予告状
「るいと先生!」
事務所の所長室に駆け込んできたのは、探偵助手の森杉蘭華でした。丸眼鏡とポニーテールが特徴の、若い女性です。
「どうした、森杉くん。そんなに大声を出して。いつも言っているだろう、探偵助手たるもの、常に冷静でいなさい、と」
どっしりと構えて余裕の笑みを浮かべるのは、数々の難事件を解決してきた名探偵、赤羽根瑠衣斗です。
「でも先生、これ……」
中身が透けて見えるような薄紙の封筒を、蘭華助手から受け取ります。その途端、彼の表情が険しくなりました。開封して中身を確認すると……。
「またか! フラワー・シーフめ!」
赤羽根探偵は、忌々しそうに吐き捨てるのでした。
フラワー・シーフ。
最近、世間を騒がせている大怪盗です。正体は女性らしいと噂されていますが、変装の名人であり、誰も素顔を知りません。
直訳すると『花泥棒』ですが、実態は全く違います。狙うのは美しい宝石ばかり、盗んだ後には代わりに花を一輪残していく、というのが手口でした。
そしてもう一つ、赤羽根探偵事務所と警察に予告状を送りつけるのも恒例行事。今回の手紙には、署名がわりの薔薇マークと共に、次のように書かれていたのです。
『今週末の日曜夜
稀代の奇術師ヒルカワ氏の邸宅へ伺います
赤い瞳の涙を頂戴しに』
最初のコメントを投稿しよう!