第1話 予告状

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第1話 予告状

    「るいと先生!」  事務所の所長室に駆け込んできたのは、探偵助手の森杉(もりすぎ)蘭華(らんか)でした。丸眼鏡とポニーテールが特徴の、若い女性です。 「どうした、森杉くん。そんなに大声を出して。いつも言っているだろう、探偵助手たるもの、常に冷静でいなさい、と」  どっしりと構えて余裕の笑みを浮かべるのは、数々の難事件を解決してきた名探偵、赤羽根(あかばね)瑠衣斗(るいと)です。 「でも先生、これ……」  中身が透けて見えるような薄紙の封筒を、蘭華助手から受け取ります。その途端、彼の表情が険しくなりました。開封して中身を確認すると……。 「またか! フラワー・シーフめ!」  赤羽根探偵は、忌々しそうに吐き捨てるのでした。  フラワー・シーフ。  最近、世間を騒がせている大怪盗です。正体は女性らしいと噂されていますが、変装の名人であり、誰も素顔を知りません。  直訳すると『花泥棒』ですが、実態は全く違います。狙うのは美しい宝石ばかり、盗んだ後には代わりに花を一輪残していく、というのが手口でした。  そしてもう一つ、赤羽根探偵事務所と警察に予告状を送りつけるのも恒例行事。今回の手紙には、署名がわりの薔薇マークと共に、次のように書かれていたのです。 『今週末の日曜夜  稀代の奇術師ヒルカワ氏の邸宅へ伺います  赤い瞳の涙を頂戴しに』    
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