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柳沢警部は事件について考えていた。
吉田容疑者はああは言っているが館長が言っていた盗品はないことはもう分かり切ったことだった。
そしてもう一つ気になることがあった。それが佐々木容疑者との食い違いだ。
些細な違いではあるが吉田は佐々木を『アイツの仲間』と言っていた。そして佐々木は吉田を『恩人』と言っていた。
吉田にそのことを訊いてみたが知らぬ存ぜぬの一点張りだった。しかしその顔には何かを隠している様子はなかった。
佐々木に訊いても恩人としか言わず理由は言わなかった。
──吉田と佐々木。一体どんな関係があるのだ。
しかしこの事件はそれ以上調べられることなく警察署の過去の事件のファイルに閉じられた。
それと同時期にもっと大きい事件があったのも理由の一つだろう。
その日、ある考察系サイトで派閥が生まれていた。
それは『黒幕説』と『英雄説』だった。
『俺はこの事件の真犯人がいると思ってる』
『一般市民が強盗の常習犯を捕まえたんじゃ?』
『市民警察って名乗って?』
『それアリですねwww』
『そいつらが黒幕なんだよ』
『結局どっちなの?』
『じゃあ俺が突き止めてやる。興信所にいた経験を活かしてな』
『頑張って〜^^』
『いつになるやら……』
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