怖い物件に住みたい[読みきり]

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「怖い物件を紹介してほしいと」 「はい」  安在不動産の客間で、安在は来客をもう一度見る。 「失礼ですがお名前は」 客は紙とペンを取り出し、横線をふたつ引き呟く。 「一一とかいてニノマエハジメと読みます」 「ニノマエさんですか。どうしてウチにそんなことを?」 ニノマエは胸ポケットから名刺を取り出し、安在の前に置く。 「この方の紹介です」  名刺の名前を見て安在は頷く。 「わかりました、ご紹介しましょう。ちなみに見るだけですか」 「いいえ、そこに住みたいんです」 ニノマエは食い気味に呟く。 「ぜひ住みたいんです、それもなるだけ早く、お願いします」 その態度に安在は当惑するが、とりあえず行ってみましょうと腰を上げた。
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