怖い物件に住みたい[読みきり]

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 ──三日後、ニノマエは精神崩壊寸前だった。 「な、なんなんだこのアパートは……。入居当日に隣で一家心中が起きて、夜は屋上から投身自殺、昨日は反対の部屋で殺人が起きてる。なのに警察は来ないうえに、死んだはずの家族や住人が当たり前のように生き返っている、どうなっているんだ、いったい」  六畳一間の簡素な部屋でニノマエはのたうち回る。 「あのヒトに会いたい、その一心で怖い物件に住んだのに、まさかここまでとは……」  ニノマエは名刺を取り出す。 「会いたい……」  そう呟いた瞬間だった。 「ソイツをよこせーーー」 そう叫びながら壁から無数の手が飛び出し、押入れと天井に住んでたヤツらがとびかかってくる。  昼なのに窓の外には無数の幽霊がやってきて、玄関からは死んだはずの隣人たちがやってきた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加