怖い物件に住みたい[読みきり]

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「ソイツをよこせ、アイツに会って文句言ってやるんだ」 「そうだそうだ、オレたちをいつもヒドい目にあわせやがって、アイツにも同じ目にあわせてやるんだ」 ニノマエは名刺をしまうと窓から飛び出す、ガラスの破片が刺さるのも落ちて死ぬかもしれないが、ここよりマシだった。 「──うわぁ!!!!」 ニノマエは大声を呟いて目をさます、そこはまだ市電の中だった。  女子高生たちはビックリしてこちらを見ている。それを安在が落ち着くように穏やかな顔で心配しないでと言った。 「降りましょうか、ニノマエさん」  駅前のベンチに座ると、ニノマエは呟く。 「今のはいったい……」 「裏トヨハシです」 「裏トヨハシ?」 「ヤマサの奏でるチクワを持って、市電のあの席に座ると行ける場所です。怖い物件でしたでしょう、あの方の御墨付きです」
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