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プルルルルルル プルルルルルル 連休明けの社内は、ばたばたしていた。 あちこちで電話の音が鳴っている。 「佐伯さん、ちょっとよろしいですか。」 声の主を見ると、高木部長が パソコンの画面を指している。 就業早々に、嫌な顔を見ちまった。 高木祐介。最近、異例の昇格でこの支店に 異動してきた。 年下のクセに生意気なのだ。 まぁ、上司なのだから仕方ない。 実際、仕事ができるのは認めざるを得ない。 今日も洒落たスーツを着こなしている。 「はい、なんでしょう?……痛っ」 目線を完全に高木に向けていたから、足元の段ボールに気づかず、つまづいてしまった。 高木がヘラッと笑う。 「足、大丈夫ですか? ここなんですけどね、帳簿とパソコンの 数字が合わないんですよ。」 「……あれ?ほんとだ。」 「しっかり数字を確認しながら、入力を よろしくお願いしますね。」 「はいっ、すみません!」 ばかに丁寧にしゃべるところがまた いけすかない。 確かに俺は出世コースから完全に外れている。 10歳も歳上なのに、まだこの程度のミスを する俺は、よほど間抜けに見えるだろうよ。 たまに、薄ら笑いで俺を見る目が 許せない。
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