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思案顔でトイレから出ると、ちょうど吉田美奈が女子トイレから出てきたところに鉢合わせた。 「あら、高木くんじゃない!お久しぶりね。 どうしたの?眉間に皺なんか寄せちゃって」 真ん丸の目を、更に見開いて笑う。 「お、吉田。久しぶり」 「いや、もう岡本ですけど」 そう言うと軽く胸を張り、名札を指差した。 「ああ、そうだったな。結婚したもんな。 まさかまた同じ支店になるとはね。」 「それはこっちの台詞よ。まさか高木くんが この支店に来るなんてね。元気だった?」 美奈はハンカチで手を拭きながら、小さな体を揺らして、すたすたと歩き始める。 相変わらず落ち着きがない。 「うん、まぁね。最近はちょっと元気を 無くし気味だけどね。年上の部下との コミュニケーションに手こずってるよ」 「あ~。そちらの部署は、おじさんだらけだもんね。でもみんな悪い人じゃないのよ。」 「それは俺も思う。 一人なんかツボな人いるし。」 「ま、お互い頑張りましょ!またね!」 俺たちは笑いながらそれぞれの部署へと 戻って行った。 元カノの美奈といつか顔を合わせる瞬間を思うと多少の緊張があったけど、 その時は突然訪れ、気が抜けるくらい あっけない、自然な再会になった。 俺から別れたとは言え、修羅場になることなく円満な別れだったし、お互い今は幸せで、 2人の間に何のわだかまりもない。 元々、美奈は気持ちの良い性格だった。 こんな小さな出来事だけでも、心が 少し晴れて、明るい気持ちになれた。
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