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会計を済ますと、典子は一人、喫茶店に残った。他の三人は、この後、それぞれ予定が
あるらしい。うちは、今は夫と二人暮らし。
時間はたっぷりある。
みんなに合わせて盛り上がっていたけど、
本当は、一人静かに珈琲を飲む方が好きだ。
ここに来たからには、どうしても大好きな
チーズケーキを食べたかった。
珈琲も、飲んだ気がしない。
典子はケーキセットを注文して、ついでに
みんなの空いたカップを下げてもらった。
片付いたテーブルに頬杖をつき、
何とはなしに、隣のテーブルに座っている女性を見る。 私より10歳くらい若いだろうか?
フォークで丁寧にチーズケーキを切り、
口の中に入れる瞬間、目が合った。
目をそらすタイミングを逃し、見続けて
しまった。
「あ……、ごめんなさい。
ここのチーズケーキ、美味しいわよね。
私もいま、頼んじゃった」
気まずくて思わず話しかけてしまったけど、
いきなり見知らぬおばさんに声かけられて
無視されるだろうかと思ったら、
案外すんなり返事をしてくれた。
「美味しいですよね。私も好きです。」
「ごめんなさいね、せっかく一人の時間を
楽しんでいるのに、私達、うるさかった
でしょう?」
「いえいえ。楽しそうでしたね。」
そう言うと、ニコッと笑った。
真っ白な肌に、長い黒髪。日本人形みたいに
スッとして、冷たい感じがする美人だが、
笑うとイメージがガラリと変わり、とても
可愛らしくなる。
感じの良い女性だった。
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