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部屋のクローゼットを片付けていると、奥から紐をガチガチに巻かれた小箱が出てきた。
なんだったかな、これ。ハサミでチョキチョキと拘束を解き、箱をソッと開ける。
中には青いビー玉のついたヘアゴムが1つ入っていた。何故こんなものがこんな所に? 首を傾げて思案すること数十秒、ハッと思い出す。これは志帆ちゃんのものだと。
シホちゃんはわたしの双子のお姉ちゃん。だけど小学校3年生の頃に家出をして高校生の年齢になる現在まで帰ってこないままだ。行方不明、というやつだ。
大好きなシホちゃんが突然いなくなってしまったことが当時ショックだったカホは、きっと姉との楽しかった日々を思い出したくなくてヘアゴムを封印したのだろう。
「香帆ちゃん、ショートケーキとチーズケーキどっちがいい?」
部屋の外からママの声が聞こえてきた。急いで箱をクローゼットに戻して部屋を出る。
「カホ、どっちも食べた~い」
甘えた声でワガママを言えば、ママは困ったように、でも愛おしげに笑ってくれた。
階段をリズミカルにおりるカホの頭の上で赤いビー玉のついたヘアゴムが揺れている。
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