しあわせのために演じます

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 シホちゃんとカホは一卵性双生児の姉妹で、瓜二つ。パパもママもわたし達の見分けがつかなくて、シホちゃんには青いビー玉のヘアゴムを、カホには赤いビー玉のヘアゴムを買い与えてくれた。  色違いのヘアゴム、そんなことをしてようやく姉妹を判別出来るというのに、パパとママはシホちゃんに辛くあたり、カホを溺愛した。  シホちゃんは理不尽なことで怒鳴られ、叩かれ、除け者にされ、貶められていた。一方のカホは甘やかされ、抱きしめられ、一番に考えてもらえて、愛されている。幼い頃はどうして同じ顔の姉妹でこんなに差がつけられるのかが分からなかったが、大きくなってそのワケを理解した。  ママは持病で一度しか妊娠・出産が出来ない。男の子と女の子の両方がほしかった両親は双子を身籠った最初こそ喜んでいたが、姉妹の双子に落胆した。そしてその落胆は段々と怒りに代わり、シホちゃんに冷たくあたることで鬱憤を晴らした。  では何故、悪意を向けられたのがシホちゃんだったのか。そこに理由などない、どちらでもよかったのだ。だって両親はヘアゴムがないとろくに姉妹を判別することすら出来なかったのだから。
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