しあわせのために演じます

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 シホちゃんを家に独り置いてパパとママとカホの3人でお出掛けにいくことは日常茶飯事だった。  シホちゃんが泣いて抗議すれば、パパは「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と怒鳴りつけ、ママはほっぺたをピシャリと平手で打った。“お姉ちゃん”だなんて、双子の姉妹に“姉”とか“妹”とかそんな区別はあってもないようなものなのに。  だからわたし達はヘアゴムを時々交換するようになった。悲しみも喜びも姉妹で共有することにした。わたし達は両親によって差をつけられていたが、姉妹の仲は良好だったのだ。  いつも冷たくされて泣いているシホちゃんのことをカホは放っておけなくて、ヘアゴムの交換を提案した。するとシホちゃんは迷った顔をしたが最後にはこくりと頷いて「ありがとう」と言って笑ってくれた。  両親はわたし達の入れ替わりに全く気がつかなかった。全く、全然、これっぽっちも。  わたし達は瓜二つの双子。お互いを完璧に演じるきることなんて造作もないのだ。
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