しあわせのために演じます

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 小学校3年生の夏休み、両親は旅行の計画を持ち出した。行き先はカホがずっと行きたいと言っていた遊園地で、ホテルも園内にある豪華でかわいい所だ。  シホちゃんと顔を見合わせて喜んだのも束の間、パパとママは口を揃えて言った。 「シホはお留守番だよ」  すかさずカホはそんなのは嫌だ、シホちゃんも一緒がいいと反論したが、両親はにこにこと笑って聞き流すだけ。  すると、項垂れて黙っていたシホちゃんが急に“ギャー!!”と金切り声をあげたかと思うと、 「いつもいつもカホばっかり! もうこんなの嫌っ!! 耐えられない!」  そう喚き散らして家が飛び出して行ってしまった。そんなシホちゃんを見るのは初めてで、精神的に追い詰められているんだと幼いながらも理解した。  だけど両親はやれやれとため息をつき、旅行の計画を進める。外はもう夕方で薄暗くなってきているというのにシホちゃんのことを追いかけもしない。だから──。 「シホちゃん、待って!」  カホが代わりに飛び出した。
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