しあわせのために演じます

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 シホちゃんに首を絞められそうになった、その事実に頭は激しく混乱していた。  パパとママと違ってカホはシホちゃんのことを大切に思っていた。だから入れ替わってあげていたのに、何で「大嫌い」だなんて言われるの? 理不尽だと、本気で苛立ってしまった。 「カホちゃん、待って!」  後ろからシホちゃんの声がして、カホのことを追いかけてきていることが分かった。 「来ないでよ! カホにひどいことしようとしたくせに!!」 「お願い、カホちゃん!」 「うるさい! シホちゃんなんていなくなっちゃえばいいんだ!!」  ワッと叫んで公園を飛び出したその時、眩い光がカホの体を照らす。え? なんて思った次の瞬間にはカホの体は宙を待って、固い道路の上に叩きつけられた。  こうして“本物のわたし(カホ)”は車に轢かれて死んだのだ。  だから待てと言ったのに。
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