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国王陛下に呪いをかけたのは誰か?
「これは採血を何度も繰り返した痕ですね。ポーションの質を上げるためにご自分の血を頻繁に提供なさっていた証です。そうしなければ、効果が切れた際、今のようにカルラ様に襲い掛かって、命の危険に曝されていたからです。カルラ様は、ルードヴィッヒ国王陛下が刃物を持たないように常に用心していたはずです。今回もルードヴィッヒ国王陛下に護身用の短剣を持たないように命令をしていたはずです」
「貴女の話は嘘よ」
カルラの否定の言い方はか弱さが滲み出ていた。
「呪いには代償が付きものです。隷属の呪いの種の寿命は十七年から二十年前後であると記録にあります。これはよほど生存環境が良い場合に限ります。それ以後はいつ種が、自らの生存のために暴走してもおかしくないとあります」
「ネブラ嬢、種の暴走とはどのようなものか?」
ハインリヒが尋ねた。
「種が呪いをかけた者の血が欲しいと、殺さぬように吸い続けろとルードヴィッヒ国王陛下に命令し始めるのです」
「父上が呪いの種に支配され、母上を傷つけ続けるということか?」
フランツは顔面蒼白になっている。
「はい、そうです」
「では、ルードヴィッヒ国王陛下は、カルラに数十年支配され、その後は呪いの種に支配された、というのか?」
ハインリヒの質問に、「はい、そうです」と、ネブラは頷いた。
皆は、それではルードヴィッヒ国王陛下の人生はなんだったのかと絶句した。
カルラは震え、目に涙を溜めながら、ヒステリックな声で言った。
「ルードヴィッヒには、今日だってたっぷりとポーションを飲ませていたわ。なのに、なぜ暴走したのよ」
「それは…… 私が、ルードヴィッヒ国王陛下が召し上がる紅茶に、毛細根にある養分を取り入れる穴を塞ぐ薬を入れたからです。穴が塞ぐと毛細根の萎れが早く進み、種にポーションが行きません。なので、種が暴走するように促したのです。この呪いの種は、なんの関係もない方の血を欲しがりません。この呪いを形作っている要素を知れば、呪いをかけた人物を特定出来るのです」
皆は、ネブラがいつそんな薬を入れたのだろうかと首を傾げた。
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