その呪いはおいくらかしら?

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その呪いはおいくらかしら?

「それだけの技術を用いて作られた種はおいくらするのかしら? 一粒でもお高いのでしょう?」  アデリナが、ネブラへ聞いた。 「そうですね、はっきりと金額が決まっていませんが、その手の闇取引相場は、一粒で五千万キルクルスと聞いたことがありますね。体内に残らせることで呪いの効果を得られるので、一粒以上買い求めることを勧められるでしょうし、一般市民には手が出せませんね」 「そうですわね、お屋敷が買えるでしょうね。その種を体内に植え付けられた後、維持するためにポーションを飲むようだけれど、それはおいくらするのかしら?」 「こちらもはっきりと金額は決まっていませんが、相場は一本百万キルクルスからですね。この金額よりも高い傾向があります」 「それ週に何本飲まれるのかしら?」 「質が良いもので一本くらいでしょうか」 「月に四百万キルクスとして、年に四千八百万キルクルス以上が必要ね。お高い金額よね。例えば、買うための金額をクリア出来て、呪いの種を購入したとして、宮廷料理人が、ルードヴィッヒ国王陛下とフランツ殿下の食事に、ピンポイントで呪いの種を入れることは可能かしら?」 「無理だ」と、ハインリヒは、首を横に振った。 「王族が食べる食事は、食卓に上がる前に必ず毒見係が食する。それに出された食事を、ルードヴィッヒ国王陛下と兄上が全く手をつけないことだってあり得る。確実に相手に食べさせるためには、呪う側本人がこれを食べろと差し出すしかない」 「王族が他人様から差し出された食べ物を、毒見も無しに召し上がることはあるのでしょうか?」 「アデリナ嬢、それはあってはならないのですよ。私達は、いただいたものを持ち帰りますが、何が入っているかわからないものを食べないのです。安全だとわかった食べ物のみ、くださった方に感謝をしながら食べるのです」 「例えばよくお会いになられて、お話を何度もなさって、その方に対する警戒心がなくなっていましたら、一口サイズの食べ物ならば召し上がるのではないでしょうか?」  ネブラ嬢は、良いタイミングで良い質問をしてくれる。ハインリヒは、ふっと笑った。 「たかが一口と思って油断なされたのかもしれないと? ルードヴィッヒ国王陛下と兄上が?」 「そうです。されど一口で隷属の呪いを、体内に入れてしまった自覚もない」 「●※▲○ならばありえそうだわ」  アデリナ、声を出さずに言ったそこ、俺の名前を言っただろう。 アデリナの小馬鹿にしたような態度が、フランツは嫌いであった。
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