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魔女の微笑みは女神級
(ああ、ベアトリクスとゼッケンドルフ宰相とハインリヒは邪魔だわ。フランツが王太子になったら、害虫駆除をしなくちゃね)
「ルードヴィッヒ、いつも言っているでしょう。考えすぎるのは良くないって。国王陛下の公務でストレスが溜まっているのよ。部屋に戻ってお休みいたしましょう」
「カルラ、今は君の言葉がうるさく感じる。黙ってくれないか」
(ルードヴィッヒ、どうしたの? 私の声は心地よいと言っていたじゃないの。まさかネブラの声に反応するように、魔法をかけられた?)
ルードヴィッヒの顔は、ネブラに向けられている。ネブラの穏やかな微笑みから、ルードヴィッヒは目を逸らすことが出来ないでいた。
(彼女は、暗闇に一人閉じ込められた私の前に突然現れた女神のようだ)
「ええ、ありえませんわね。今まで記憶の糸を繋げようと人知れず苦しんでいらしたのですね」
「ああ、苦しい。ネブラ嬢、私の脳はいつも靄がかかっているようなのだ。私が問題をどう解決しようか考えていると、誰かがこうしろと命令をしてくる。それも頭に直接届くのだ」
「いつからそのような症状が出ていましたか?」
「ネブラ嬢がさっき聞いた二十二年前からだ」
「カルラ様は、ルードヴィッヒ国王陛下のこのような症状をご存じでしたか?」
「ああ、知っていたようだ。薬を紅茶に垂らし、私に毎日飲ませている」
「鬱のお薬よ」
これくらいで動じる私ではない。カルラの態度はそのように見えた。
「ルードヴィッヒ国王陛下、カルラ様との出会いをお聞きしてもよろしいですか?」
「解呪をすることにそんなこと必要かしら?」
「母上、いいじゃないの。話してやりなよ。王妃陛下より愛されているんだからさ」
フランツは、ハインリヒに対して薄笑いを浮かべ、ハインリヒは奥歯を噛んだ。
「私は、自分のことを話すのが好きではないの」
「ルードヴィッヒ国王陛下に語っていただきたいのです。カルラ様と初めてお会いしたのはどこですか? 場所をおっしゃってください」
「カルラとは、クルーゲ伯爵が催した夜会で出会った。ちょうど私はその地方へ視察に行っていて、それを知ったクルーゲ伯が近隣の貴族や贔屓にしている商人を招いて、毎冬行う夜会に私を招待したのだ。私は王宮で催される夜会で、身分的に話しかけることも話しかけられることもない貴族階級や招待することもない商人と会ってみることも社会勉強だと思い出席した。そのときゴルツ子爵から養女のカルラを紹介された」
「カルラ様のそのときの印象はいかがでしたか?」
「婚約者と比べた」
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