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国王陛下と側妃の間には真実の愛がない
「そして、私に一目ぼれをしたのよね? ルードヴィッヒ」
「うざったいと思った」
(なんですって? 私、そのように言えと命令をしていないわ。ルードヴィッヒ、なぜ真実の愛に目覚めたと言わないの。今の言葉を撤回してそう言いなさい)
「私は、真実の……」間を少し置いてから、
「違う! 私にそう言えと命令をするな」と、大声で言った。
「今、誰かに命令をされたのですね」
「そうだ、命令された。何かについて深く思考をしようとするといつも邪魔してくる奴がいる。この隷属の呪いを解けば、自分を取り戻せるのだろう? ネブラ嬢、今すぐに解呪してくれ」
「ルードヴィッヒ国王陛下、焦ってはいけません。この禁術を使った者の特定が先です。その方を陛下から遠ざけませんと、解呪は出来ません。禁術を使った者を野放しにしておくと、解呪後も狙われる可能性が高いからです。ルードヴィッヒ国王陛下、どうぞ心を落ち着かせてくださいますようお願い致します」
「ルードヴィッヒ国王陛下、ネブラ嬢にすべてお任せください。ネブラ嬢は必ず呪いをかけた者をあぶり出し、陛下を救います」
「ルードヴィッヒ、ネブラとハインリヒはこう言うけれど、それを当てに出来まして? 今、ルードヴィッヒに必要なのは、お休みと癒しですわ」
(さあ、ルードヴィッヒ、今度こそこの部屋を出るのよ。こんな茶番には付き合えないと怒るのよ。さあ、怒気を含んだ声で、ネブラが震えて泣き出すくらいに言いなさい)
「カルラ、君はずっと部屋に戻りたがっているね。一人で部屋に戻りなさい。後で呪いをかけた者の名を知らせるよ」
(私の命令が届かない?)
カルラは、ルードヴィッヒの顔を覗き込んだ。顔を覆っていた毛細根が萎れて来ている。
(これでは、脳に絡みついている毛細根も萎れているわね。だけど、こんなに早くポーションの効果が切れる訳ないわ。だって今朝、たっぷり飲ませたもの。ネブラが飲ませた可視化する薬が原因? だとしたら……)
なんとか手を打たなければ、ルードヴィッヒが正気に戻ってしまう。
カルラは、人事を采配できて、大金が自由に手に入り、皆がかしずくこの地位を保ちたいと望んでいる。なぜならば、カルラは人生で最高に幸せを感じているからだ。
(そのためにルードヴィッヒの隷属の呪いをこのまま持続させ、フランツを王位につけて、私は国母となる。糞魔女め、本当に邪魔な奴だわ)
ネブラは、カルラが髪の毛を逆立てているように見えた。
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