天は側妃に味方をしているのか?

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天は側妃に味方をしているのか?

「ルードヴィッヒ国王陛下、カルラ様のどのようなところが、うざったいと感じたのですか?」 「すべてだ」  ルードヴィッヒとクルーゲ伯爵との会話が終わると、二番手にゴルツ子爵とカルラが挨拶をした。その後、カルラはルードヴィッヒの傍にずっと居続けた。貴族と商人が挨拶に来ても、用意された料理や飲み物を取りに行っても、何食わぬ顔でずっと傍らに居続けたのだ。  貴族と商人達には、お邪魔をしてはいけないと距離を置かれ、料理が盛り付けられた小皿を手に取ろうとすると、横から手を出して、それを取ってルードヴィッヒに差し出し、ワインをグラスに注ごうとすると、ワインを手に取り、ルードヴィッヒのグラスに注いだ。  そこにいた人々は、ルードヴィッヒに婚約者がいることを知っていても、婚約者を一途に愛していることを知らない。だから王都から、表には出せない恋人を連れて来たのだろうと思って、誰も気にしていないようだった。  ルードヴィッヒは、カルラから距離を取ろうとしたがうまくいかず、カルラから放たれる香水に酔い、意識が遠退いて行った。 (香水に、毒を仕込んだのね)  一つは、狙った獲物(ルードヴィッヒ)の意識を飛ばす毒、この毒は近距離にしか飛ばない。  もう一つは、夜会にいた人々と護衛達に、ルードヴィッヒの傍にカルラがいても違和感を持たせない毒。この毒はホール中に飛んだだろう。 (どちらも神経を鈍らせる毒だ)  それ以外に獲物を引きつける毒である魅了も使ったかもしれない。複数の毒を香りに溶け込ませる。中級魔術師でも出来ないことではないけれど、毒を精製する技術に優れているような感じがする。 「ルードヴィッヒ国王陛下、その後いかがなされたのですか?」  ネブラの問いに、カルラが答えた。 「私が介抱して差し上げたのよ」 「私が目覚めて部屋を見渡すと、クルーゲ伯邸の一室に寝かされていた」  カルラが、ルードヴィッヒの手を握り良かったと涙目をした。ルードヴィッヒはすぐにカルラの手を解いた。するとカルラは、無理やり私の口を開けて丸薬を入れ、口移しで水を飲ませた。ルードヴィッヒは、このことを言えなかった。 「薬を飲んですぐに元気になったのよね?」 「ポーションですか?」 「丸薬だ」 「なん粒程、お飲みになられましたか?」 「三粒だったと思う」  やはり従属の呪いをかけたのはカルラだ。フランツ以外はそう確信した。だが、その場にいて丸薬の中を調べた訳ではないので証拠がない。  ネブラは、カルラの悪事を暴くことが出来るのだろうか? ゼッケンドルフ宰相は、不安になった。  カルラは、そんなゼッケンドルフ宰相を見て、ふふふと笑った。 (これって、天が私にまだ味方をしていると思っていいかしら?) 
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