30人が本棚に入れています
本棚に追加
天は側妃に味方をしているのか?
「ルードヴィッヒ国王陛下、カルラ様のどのようなところが、うざったいと感じたのですか?」
「すべてだ」
ルードヴィッヒとクルーゲ伯爵との会話が終わると、二番手にゴルツ子爵とカルラが挨拶をした。その後、カルラはルードヴィッヒの傍にずっと居続けた。貴族と商人が挨拶に来ても、用意された料理や飲み物を取りに行っても、何食わぬ顔でずっと傍らに居続けたのだ。
貴族と商人達には、お邪魔をしてはいけないと距離を置かれ、料理が盛り付けられた小皿を手に取ろうとすると、横から手を出して、それを取ってルードヴィッヒに差し出し、ワインをグラスに注ごうとすると、ワインを手に取り、ルードヴィッヒのグラスに注いだ。
そこにいた人々は、ルードヴィッヒに婚約者がいることを知っていても、婚約者を一途に愛していることを知らない。だから王都から、表には出せない恋人を連れて来たのだろうと思って、誰も気にしていないようだった。
ルードヴィッヒは、カルラから距離を取ろうとしたがうまくいかず、カルラから放たれる香水に酔い、意識が遠退いて行った。
(香水に、毒を仕込んだのね)
一つは、狙った獲物(ルードヴィッヒ)の意識を飛ばす毒、この毒は近距離にしか飛ばない。
もう一つは、夜会にいた人々と護衛達に、ルードヴィッヒの傍にカルラがいても違和感を持たせない毒。この毒はホール中に飛んだだろう。
(どちらも神経を鈍らせる毒だ)
それ以外に獲物を引きつける毒である魅了も使ったかもしれない。複数の毒を香りに溶け込ませる。中級魔術師でも出来ないことではないけれど、毒を精製する技術に優れているような感じがする。
「ルードヴィッヒ国王陛下、その後いかがなされたのですか?」
ネブラの問いに、カルラが答えた。
「私が介抱して差し上げたのよ」
「私が目覚めて部屋を見渡すと、クルーゲ伯邸の一室に寝かされていた」
カルラが、ルードヴィッヒの手を握り良かったと涙目をした。ルードヴィッヒはすぐにカルラの手を解いた。するとカルラは、無理やり私の口を開けて丸薬を入れ、口移しで水を飲ませた。ルードヴィッヒは、このことを言えなかった。
「薬を飲んですぐに元気になったのよね?」
「ポーションですか?」
「丸薬だ」
「なん粒程、お飲みになられましたか?」
「三粒だったと思う」
やはり従属の呪いをかけたのはカルラだ。フランツ以外はそう確信した。だが、その場にいて丸薬の中を調べた訳ではないので証拠がない。
ネブラは、カルラの悪事を暴くことが出来るのだろうか? ゼッケンドルフ宰相は、不安になった。
カルラは、そんなゼッケンドルフ宰相を見て、ふふふと笑った。
(これって、天が私にまだ味方をしていると思っていいかしら?)
最初のコメントを投稿しよう!