国王陛下が倒れる

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国王陛下が倒れる

 ルードヴィッヒは、心臓を押さえて、顔が真っ青になり椅子からずれ落ちそうになった。ハインリヒは、ルードヴィッヒに駆け寄り体を持ち上げ椅子に座らせた。 「医者を呼べ」  ハインリヒが大声で言った。警備の任に就いていた騎士が、何事かと会議室の扉を開け、事情を知ると大声で叫んだ。 「国王陛下がお倒れになられた。医者を呼べ。担架を持って来てくれ」 (こんなときにポーションの効果が切れるなんて、なんて最悪なの) 「こんなに大袈裟にしなくても大丈夫よ。いつものことだわ」 「これがいつものことだと?」  ハインリヒが隣に立つカルラを見上げると、冷たい顔で苦しむルードヴィッヒを見下ろしていた。まるで壊れていく道具を修理しながら、無理やり使ってやっているというような顔だ。 (父上をなんだと思っているのだ) 「ねえ、そこの貴方、私の侍女に部屋からいつものポーションを持ってくるように言ってちょうだい。早く持って来るように言ってね。遅くなったらどうなるかわからないからねとも伝えてちょうだい」  侍従は急いで下がって行った。カルラはネブラを見た。ネブラはルードヴィッヒの元へ行かずにただ茫然と突っ立っているように見えた。 「貴女、何にも役に立たない魔女ね。こんなとき魔女ならどうすればいいの? 魔法で苦しみを和らげて回復させたらどうなの」  ネブラは、黙りを決め込んだようだ。  カルラに急かされた侍女は、息を上げながら会議室へ入って来た。侍女は美しい模様の箱を抱えていた。 「それをそこのテーブルへ置きなさい」  侍女が箱をテーブルへ置いた途端に消えて、ネブラの腕に抱えられていた。侍女は、カルラの怒った顔を見て、会議室から逃げるように出て行った。 「その箱には鍵がかけられているのよ。開けられやしないわ」  ネブラは蓋を開け、中身がポーションだとわかると、箱ごと消した。 「貴女、国王陛下を殺す気なの!」  怒鳴り声を上げたカルラは、さっきの箱を出せとネブラへ手を上げた。  カルラはふふふと笑った。 (このようになってしまったんだもの、ネブラの顔を思いっきり叩いても誰も私を非難はしないわ)  ネブラは、カルラにふふふと笑い返し小声で言った。 「貴女に動作停止の魔法をかけたのよ。そして、今の言葉は貴女にしか聞こえないわ」  ハインリヒは、ルードヴィッヒの身をゼッケンドルフ宰相に任せ、カルラの前に立ちはだかった。 「カルラ! 私のネブラに手を出してみろ。容赦しないぞ」 「ハインリヒ殿下、私は大丈夫です。ルードヴィッヒ国王陛下のお傍にいてあげてください」 「ネブラ、この状況でそれは無理だ。私は君を守りたい」
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