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王宮からの使者②
「一度、王子を診ていただき、解呪できなければそのように国王陛下と側妃に申し上げてください」
あまりにも使者が、あっけらかんとし過ぎているような気がした。
「呪われた王子様は、未来の王太子になられる方ではありませんか。このまま解呪されなければ、王子様がどうなってしまわれるのかと、ご心配なのではありませんか?」
「国王陛下とそのお母君である側妃は、大変心配をしております」
「あなた方、臣下は王子様をどのように思っていらっしゃるのですか?」
「もちろん心配しておりますよ」
軽すぎる言い方である。本音は違うようねとネブラは思った。
「ですが、王太子候補は、もう一人いらっしゃいますのでね」
「ああ、正妃陛下が御生みになられた第二王子殿下ですね」
第二王子の年齢は、十八歳。正妃の実家、公爵家がバックアップしている。
それに対し呪われた王子の母君は子爵家、国王陛下の寵愛だけが頼りである。
「呪われた王子の浮気相手はどなたか、ご存じですか?」
不意に使者が、ネブラに聞いてきた。
「身分の高くない貴族のご息女だと噂で聞いていますが」
「聖女様ですよ。聖女様は男爵家のご令嬢です。呪われた王子が、侯爵令嬢を正妃とし、男爵令嬢を側妃とする。正に今の状況と同じだ。王家のお家芸ですかね」
使者にしては、失礼な物言いである。呪われた王子は軽んじられているようだ。
「王家がお得意としているのですね」
「でも伝統ではないですからね。こんなこと様式に出来ません」
「ご使者様は、国王陛下と正妃陛下、どちらの味方ですか?」
「この国のためになる方は、正妃陛下の王子殿下です。日々、武術の鍛錬を怠らず、努力し、勉学も勤しんでおられます。仕えている者達への気配りもできる方です。ただ体が弱く疲れやすい。あの呪われた王子の頑丈さの半分でもあればよいのに、残念ですよ」
(使者の言いようだと、呪われた王子は独活の大木なのかしら?)
「では、解呪にいらしてくださる日時を決めたいのですが、ご都合のよろしい日はいつでしょうか?」
ネブラは目を閉じてしばらく考えた後、使者にお願いがあると言った。使者は、なんでもおしゃってくださいと、願いは出来る範囲内ならば許諾すると言った。
ではと、ネブラはニッと少しだけ口角を上げた。
「国王陛下と側妃様、呪われた王子様、呪いを依頼した婚約者、婚約者の御父君、宰相様が同席なされることをお願い致します。あとは、全身を映せる鏡を一つ用意してください」
「なんと……」
使者は困惑し理由を聞いたが、ネブラはこの願いが叶わないならば王宮には行きませんと言い、理由は答えなかった。
「ネブラ様はいつでもご都合がつくのですね?」
「はい、いつでも都合がつきます」
「かしこまりました。では、只今上げられた方々のご都合がよい日時を調整し、ネブラ様にご連絡致します」
使者は帰った。
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