魔女の能力

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魔女の能力

「このように暴れてはいけませんわ、ルードヴィッヒ国王陛下」  ネブラは、魔法でルードヴィッヒの顔面上に、白いハンカチを乗せると大人しくなった。 「ネブラ嬢、ルードヴィッヒ国王陛下に何を……」 「ハインリヒ殿下、ご心配なく。あのハンカチには麻酔薬が染み込まれております。麻酔薬を吸う度に肺の中に入り、血液を通して全身へ麻酔薬が回っていきます。毒ではありません。  それにルードヴィッヒ国王陛下のお口周りには、血がついております。それを王宮で働いている方々が見たら、どんな噂を流されるかわかりません。あのハンカチは顔から落ちない魔法をかけています。どうぞご安心を」    騎士達は、ルードヴィッヒを担架に乗せた。 「ハインリヒ殿下、ルードヴィッヒ国王陛下を一度医務室へお運びいたします。それでよろしいでしょうか?」 「そうしてくれ」と、ハインリヒは答えた。  医師はカバンからガーゼを取り出して、カルラの左肩を押さえた。カルラのドレスは血だらけである。 「母上も医務室へ行きましょう」 「フランツ、ネブラが魔法をかけたせいで、私の体が動かないのよ」  フランツは、激怒しネブラを怒鳴った。 「母上になんてことをするのだ。魔法を解け!」  フランツはネブラへ腕を伸ばした。ハインリヒは、フランツの腕を掴むとへし曲げて、ネブラを庇った。 「兄上、ネブラへの暴力は私が許しません」  フランツとハインリヒは、怒りが爆発寸前と思えるくらいな雰囲気を出していた。 「フランツ殿下、カルラ様の傷は塞がっています。お確かめください」  なに? 医者は、ガーゼを取り去った。 「これは…… どういうことでしょう?」  カルラの傷跡一つない綺麗な肌に、フランツと医者は幻を見ているような気がした。 「私が治癒魔法をかけました」  伝説の聖女が持っていたとされる聖なる力を、魔女が持っている? しかも傷に手を翳さずに治したというのかと、周囲は驚くばかりで、ネブラの次の行動を注視した。  ネブラは、カルラの前へ移動した。 「カルラ様、侍女に持ってこさせたポーションは、隷属の呪いを維持させるためのものですね。あのポーションにはカルラ様の血が入っている」 「決めつけないでちょうだい。瓶を見ただけでわかるはずがないでしょう」  カルラは鼻で笑った。ネブラはそれを無視した。 「長年隷属の呪いを維持するポーションを使い続けていますと、ルードヴィッヒ国王陛下の体内の毛細根は育ちすぎて、効果が切れるのが早くなっていきます。今は、毎日朝昼晩ポーションを服用させていたことでしょう。それでもポーションの効果切れは日々早くなっていたはずです。そうなりますとね、あることをしなければならなくなるのです。カルラ様、両袖を捲らせていただきます」  カルラの肘の内側が青くなっていた。
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