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カルラ側妃は、禁術捜査官に引き渡される
会議室に、黒いフード付きのロングローブを纏った六人が突然現れて、周囲にいる人々を驚かせた。六人はフードを深く被り、顔に黒い靄がかかっていたので不気味であった。
「我々は、禁術捜査官である。デファクト王国の依頼により、カルラ・フォン・ゴルツをマギーア共和国へ連行する」
カルラに手錠がかけられ、五人の捜査官が周りを包囲すると、足元には魔法陣が浮かび、スッと姿が消えた。
「母上?」
フランツは、カルラがいなくなった辺りを呆然と見ていた。
ハインリヒは医務室から戻って来た護衛騎士に命じた。
「フランツにはカルラと国庫を私物化した共謀の疑いがある。フランツを自室に幽閉せよ」
「なんだって?」
フランツは、騎士に両腕を掴まれ会議室を出て行った。医者も侍従たちも軽い会釈をするとそれに続いた。
一人だけ残った捜査官がフードを取った。
「ネブラ、よくやったわ」
叔母のプルウィアがネブラに抱きついた。
「魔法で姿を消して、一部始終事の次第をこの部屋で見守っていたけれど、冷や冷やしたわ」
ネブラがプルウィア叔母の顔を見ると涙を溜めていた。
「叔母様、そんなに私って頼りなかったですか?」
「とんでもない、冷静にそのときの状況を判断して追い詰めていたわ。私が冷や冷やしたのは、カルラ側妃やフランツ殿下が怒鳴ったときや手を上げたときよ。かわいい姪に暴力を振るったら何倍もやり返してやると、拳を握り締めていたわ」
「叔母様ったら、カルラ様が私に言葉の暴力を言い放ったときや手を上げたとき、右手が見えていましたものね。でも大丈夫でしたでしょう。ハインリヒ殿下が守ってくださっていましたもの」
プルウィアは、ハインリヒへ体を向けると、右手を胸に当て、左手でローブを少し持ち上げてカーテシーをした。
「ハインリヒ殿下、姪の窮地を救ってくださってありがとうございます」
「とんでもないネブラ嬢と禁術捜査官の方々のおかげで、国王陛下は呪いから解き放たれます。感謝しかありません。そして、ネブラ嬢はこれからも私が守ります」
ハインリヒは、右手を胸に当て誓いを立てるように言った。
「ハインリヒ殿下、ネブラをよろしくお願い致します」
(プルウィア叔母様は、ハインリヒ殿下がおっしゃった『婚約者』に過剰に反応しているようだわ。嘘も方便なのにどうしましょう)
ネブラは、左手を頬に当て横に傾げた。
「ネブラ、ルードヴィッヒ国王陛下とフランツ殿下の解呪を頼みますよ」
ネブラは、「はい」と頷いた。
「ネブラ、また近々会いに来るわね」
「早く会いに来てくださいね。お待ちしております」
プルウィアは、ネブラの頬に右手を当て頷くと姿を消した。
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