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魔女は、国王陛下、側妃様、第一王子殿下と会う
ルードヴィッヒの右腕に手を添えて、カルラが入室した。その際、側妃様と言い放った侍従を睨んだ。侍従は王室の決まり通りにしているだけだとカルラの睨みを無視した。
夫妻の後にフランツが入室し、ネブラと向かい合った席に、ルードヴィッヒが座り、彼の左隣へカルラが、右隣はフランツが座った。
ルードヴィッヒは、ハインリヒとネブラの席の近さを驚いたようだが、カルラにとって、そんなことはどうでもよいことであった。先ほどの侍従の無礼をルードヴィッヒに訴えて、懲らしめなければならない。
「ルードヴィッヒ、先程侍従が私のことを側妃様と言ったの。私はあなたの妃よ。王妃陛下と呼ぶべきではなくて?」
甘ったれた声で強請るように言った。
「そうだな、そう言うべきだな」
ハインリヒは、咳払いをした。
「ルードヴィッヒ国王陛下、兄上、こちらのご令嬢が、魔女ネブラ嬢です。兄上の解呪をしてくださる方です」
ネブラは、席とテーブルの間が狭かったが、軽くカーテシーをした。アデリナは、解呪という言葉に身を竦めた。ハインリヒが席に座ると、宰相、侯爵、アデリナ、ネブラが着席した。
「全く、こんな呪いをかけやがって迷惑だ。こんな女を誰が愛するものか。父上、シュライツ侯爵に爵位を返上させましょう」
フランツは開口一番、アデリナとシュライツ侯爵を罵った。
「それがいいわ。いいわよね、ルードヴィッヒ。この子のためにまた上位貴族の娘を選べばいいわ」
カルラは同意を促した。
シュライツ侯爵は、苦虫を噛み潰したような表情をした。
「ルードヴィッヒ国王陛下、シュライツ侯爵に爵位の返上を命じたならば、私、フランツ殿下の解呪を致しませんわ」
「なに、私の解呪をしないだと、貴様何をしにここへやって来た。解呪をしないでみろ、ラムスドルフ伯爵家を潰すぞ」
フランツは激怒した。ラムスドルフ伯爵家は、ネブラの生家である。
「そうだな、解呪できる魔女はネブラ嬢だけではない。お金や地位を積めば、ネブラ嬢よりも解呪経験豊富な魔女がしてくれるだろう。カルラ、なぜそれをしなかった?」
本人の目前で、能力否定をする。ネブラは、ルードヴィッヒを睨んだ。
(この解呪は、私の魔術師としてのセンスを試すものだ。それ以外のなにものでもない)
ハインリヒは、ネブラ以上の怒りで、ルードヴィッヒを睨んだ。
(なんて失礼な奴なのだ。調子に乗っているようだが、ネブラを侮ると足をすくわれるぞ)
ゼッケンドルフ宰相は、ルードヴィッヒの不誠実さに腹立ち睨んだ。
お金や地位を積めば…… そのせいでカルラによって、カルラへ媚び諂う無能ばかりが召しかかえられ、そいつらが出世をしていった。カルラはそうやって王宮内の味方を増やしている。
そいつらのせいで、この国や国王陛下への忠誠が軽んじられて、忠誠を持った者達は隅に追いやられていった。
(娘婿、ルードヴィッヒよ。暗愚な国王に成り下がったな)
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