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魔女は第二王子殿下のためにここにいる
「ルードヴィッヒ、フランツが呪いをかけられてから、私、複数の魔女に解呪を依頼しましたのよ。解呪後の魔女としての地位も財産も提示しましたの。でも……」
カルラは、悔しそうな表情を顔に浮かべた。
「カルラ、どうした?」
ルードヴィッヒは、話を途中で止めたカルラの顔を見た。
「どの魔女もこの解呪に失敗すれば、解呪を行った者に呪いがかかると言って引き受けてくれなかったの」
「して、跳ね返る呪いはどんなものだと言っていた?」
「自分の命がなくなるだけでなく、魔女の大切な家族を失う呪いですって。それがわかった途端、魔女は逃げ出したわ」
「では、ネブラ嬢、魔女同業者が嫌がる解呪をなぜ引き受けた?」
「ハインリヒ殿下のためですわ」
思いがけない言葉を聞いて、皆は一斉にネブラを見た。ただし、ハインリヒだけ顔を赤らめている。
「そなたは、ハインリヒとどのような関係なのだ?」
「ルードヴィッヒ国王陛下、ネブラ嬢は私の婚約者です」
ネブラの代わりにハインリヒが答えた。
寝耳に水が入った如くの表情をして、皆はハインリヒを見た。
(このタイミングで、こんな嘘をつくなんて、今後どうなさるおつもりなの)
ネブラは困惑した。
「なに? いつ出会い、婚約に至ったのだ?」
「ルードヴィッヒ国王陛下、母上は、なにもかも存じております」
ルードヴィッヒの表情が曇った。
「だからハインリヒが、ここにいるのか。納得したよ」
フランツが言った。
(もう、フランツったら、そこはハインリヒを追い出さなければいけないでしょう。彼は魔女の婚約者であっても、この解呪には部外者なのだから)
フランツの鈍さに、少しばかりイラつくカルラは、ネブラをちらりと見た。
緊張が感じられず、魔女としての自信があるのか堂々としている。カルラは、若い娘が解呪に来ると聞いて侮っていた。
どの魔女も逃げ出したのに、この面子を揃えて解呪を行うというのである。
どうせ、解呪できなかったときに、この面子に庇ってもらう気でいるのだろうと思っていた。どうも違うような空気が流れ始めていることが感じ取れる。
(私よ、たかが、小娘一人に震えるな。私には、ルードヴィッヒがいるのだ。彼は私に従順だ)
カルラは平静を装った。
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