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魔女は、呪いを可視化する①
ドアがノックされて、お茶が運ばれて来た。ワゴンの上でお茶を入れるメイドに、ネブラは声をかけた。
「メイドさん、お茶を入れましたら、配膳せずにそのままにしてください」
メイドの顔がなぜと理由を聞いている。
「メイドさんが理由をお聞きになりたいのでしたら、そのままいてくださって構いませんわ」
(この魔女、このメイドに何をさせる気なの。あなたの思い通りにさせやしないわ)
「用が済んだら出て行きなさい」
カルラは、メイドに向かって冷たく言い放った。メイドは、お茶を入れ終わるとそそくさと退室した。
ネブラは、ワゴンの傍に立ち、左手を宙に上げて回した。そして、手のひらサイズの小瓶を持ち上げ皆に見せた。
「これは、呪いが可視化できるポーションです。こちらをほんの一、二滴お茶に入れます。そのお茶を皆様に飲んでいただきたいのです」
「なに、すぐに解呪するのではないのか? なぜ、それを飲まなきゃいけないんだ?」
フランツは聞いた。
「魔術師が解呪をする際、呪いを可視化させ、呪われた方とそのご家族、関係者に見ていただかなくてはなりません。その呪いがどのようなものであるか、解呪をどのように行うか、説明義務があるからです」
「そんなまどろっこしいことをせずとも、さっさと解呪すればいいことではないか。解呪をしてくれる魔女を、私がどれだけ待ったか…… 魔女ネブラ、さっさと解呪してくれ」
「フランツ殿下、お気持ちをお察しします。ですが、皆様、この可視化と説明義務は、お互いのためなのです。後に何かよろしくない事が起こった場合、説明してくれなかった。見えないことをいいことに勝手にやられたと、双方に揉め事を起こさないためのものなのです」
ネブラは、可視化のポーションを紅茶に垂らした。
「皆様、どうぞ」
カルラは、両手を卓上に置き立ち上った。
「皆さん、そのお茶を飲まないで! 魔女ネブラ、私達は王族、そちらは上位貴族、毒見も無しに飲ませようなんて、私達を危険に曝す気なのかしら。
その薬は怪しいわ。睡眠薬かしら? 貴女、解呪が出来ないから逃げる気でいるのかしら? それとも王族を殺すための毒かもしれないわ。皆さん、常人では出来ないことができる魔女を簡単に信じないで」
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