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第二王子ハインリヒ殿下の悲しみと憎しみ
ルードヴィッヒは、何かにつけ、いつもフランツを褒め、フランツの顔に頬を寄せて、頭をなでていた。カルラはそれを見て嬉しそうに笑っていた。
カルラの取り巻きが、王宮の光と言うほど、明るさに満ちた家族であった。
それに対して、教育係達がハインリヒの勉学や剣術の上達を褒めると、ルードヴィッヒは不機嫌になり怒鳴った。
「そんなこと出来て当たり前だ。そんなことを私に報告することか」
そして、ハインリヒの頬を右手で、憎たらしそうに掴み、
「いい気になるなよ。フランツは、お前の何倍も人間性が上だ」と、ハインリヒを押し倒した。
「ルードヴィッヒ、我が子になんてことをするの! もっと優しくしてください」
ベアトリクスは、慌ててハインリを起こし、怪我はないか聞いた。
「厚かましい女だ。父王陛下の命令がなければ、貴様なんかと結婚なんぞしない。家の権力を使い王妃に収まったくせに、その態度はなんだ。貴様の顔なんぞ見たくもない」
「私は、ルードヴィッヒに望まれて婚約し、結婚をしました。私を選んだのはルードヴィッヒ、貴方ではありませんか」
「嘘をつくな。私が添い遂げたいと思ったのは、カルラ一人だ。貴様ではない」
「では離縁して下さい。私とハインリヒは実家に帰ります」
「貴様が勝手に私の妻になったのだ。勝手にしろ」
「父上、どうしたら母上と私を、あちらの家族のように抱きしめてくれるのですか?」
「父上だと? お前が私と血の繋がりがあろうとも、望まない子供であることには変わりない。私のことは父と呼ぶことを許さぬ。王太子殿下と呼べ。貴様達を家族だとは思っていない」
これは、ハインリヒが九歳の時にあった出来事である。
母には氷の刃を向けるような態度をし、言葉を放つ。母は泣いていた。許されるのならば、ルードヴィッヒを殴りたい。
ハインリヒは、拳を握り締めた。ネブラは、それを感じ取ったかのように、彼の拳の上に手のひらを乗せた。
紅茶を飲んでいく、カルラの顔色が変わっていった。
席に座っていたネブラが再び立ち上がった。
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