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民宿かんべの引き戸を開けて中に入ると、店に中はしんと静まりかえり、客ははけていた。奥にいる親父が、「もう店じまいしたぜよ」と大きな声を上げた。
「あの、宿泊したいんですが……」
調理室と民宿の廊下と繋がっているのか、親父は奥に向かって、おかみさんを呼び続けた。
「おい! お客さんだぞ」
そのうち、「はいはーい」と廊下を足音を立てて、おかみさんがやってきた。
「あら、えーと夜須、さんやったか。どうされたがか?」
「泊まりだとよ。いつからいつまで?」
親父が間に立って夜須に訊ねた。
「今日から二十三日迄です」
「二十三日だってよ」
「はいはい、聞こえちゅーがやき言わいでも大丈夫よ」
おかみさんが台帳を持ってくるといって引っ込んだ。親父が上がれ上がれとせっついてきたので、促されるままに靴を脱いで家内に上がった。
「空いちゅーぜよ。素泊まり? 三食付き?」
「じゃあ、三食付きで……」
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