萬緑五月

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実はこの学園、教員用食堂もある。 まあ生徒用の方は生徒で混み合うから、教師は教師じゃないと余計な疲れも生まれるからだろう。 1Aを出たところで、ちょうど1Sから出たであろう颯馬と会ったため一緒に飯を食おうという話になった。 「可哀想だしどうせなら山形も誘ってやるか〜」 「そうだな、可哀想だしな」 「男前のひろときゅんも1人で枕びちゃびちゃにしちゃうかもだしね〜?」 「誰が可哀想だって?」 ニョキ、と俺らの間にめり込んできた裕翔に颯馬が飛びのき、壁に頭をぶつける。 「って〜〜!!」 「おう裕翔、今から誘おうかと思ったのに」 「俺も今から誘おうとしたんだよ、颯馬と一緒だと理久が可哀想だと思ってな?」 「ちょおっと待てどういうこと!?」 「その通りじゃねえか、分かってんなお前」 キャンキャン吠えている颯馬は一旦放っておいて、スタスタと教員食堂へ向かう。 裕翔はふふんと自慢げな顔をして隣を歩いて…後ろから、颯馬のタックル。 「ッダッッッ…ちゅ〜のとか言っちゃってな」 「いや誤魔化せないだろ」 3人でゲラゲラ笑いながら食堂へ向かってるのを新聞部やら漫研に撮られるのはもうお馴染みになりつつある。 しばらく歩き、食堂へ到着。 人数の差から生徒用よりでかくは無いし2階席なんかもないが、ここは向こうとは違い落ち着いた雰囲気の食堂だ。 ここは教師だけじゃなく、清掃員や配達員、守衛さんなんかも使うのでメニューも豊富。美味しいのはもちろんだしコックやウェイターもいい人で向こうよりも距離が近い。 つまり、生徒の世話に疲れた教師にとっては最高の休憩所なのだ。カフェのような役割もあるので、授業がない時間に来る先生も多いらしい。 大きめだが豪華過ぎないドアを開け、中へ入る。すぐに来たからかまだ先生はそんなに居なかった。 「こんにちわ〜」 「お、木下トリオ。今日は何食うんだ?」 挨拶すると声をかけてくれたのはウェイターの南波 梓さん。普通に男前でいい人だ。俺達よりも1年長くこの学園でウェイターをしていて、その時からお世話になっている。 「こんにちわ南波さん!俺ボロネーゼのパスタで!」 「南波さんこんにちは、和食Aで。」 「ちわ、俺は…親子丼で。」 上から颯馬、裕翔、俺だ。 席は空いているので、適当に奥の方の席に座る。常々思うがこの学園は何処も彼処も椅子が最高だな。 「あっそうだ2人とも…特に木下!」 「あ?んだよ」 「明日転校生が来るんでしょ?絶っっっ対に食堂に行かないでね!?分かった!?」 「特に俺っていうのが意味わからんが、なんかあんのかよ?」 「山形にはもう話したけど…食堂イベって言うのがあるの!それがまた学園に波乱を起こすんだけど…絶対行かないでね。」 「おう、俺は内容まで聞いたが行く気なんか起きなかった。」 「へえ…めんどくせえのは何となくわかったが、お前が俺の事心配するなんて珍しいな?」 「そりゃ…そんな訳ないでしょ!王道が台無しになったらやなの!ここまで人材も舞台も揃う年なんてごく稀に決まってる!」 またキャンキャンとうるさくない程度に喚いている颯馬を横目に、隣に座る裕翔に向き直る。 「で、どんな内容だったんだよ?」 すると、裕翔は渋い顔をしてこちらを見下ろした。身長負けてんだよ。足長い癖になんで座高も負けんだよ。悪いか。 「知りたいか」 「そこまで不快な内容なのかよ。まあ気になるから教えろや」 「ちょっちょちょ山形!何教えようとしてんの!」 慌てたように止める颯馬に、そんなにな事なのか、と思う。もう少し聞こうとしたところで、いい匂いが近づいてきた。 「おーし、飯出来たぞ。何話してたんだ?」 「いや、なんか2人が教えてくれなくて。」 「おうおう酷いな2人とも。木下ハブかよ…」 颯馬の爪先を机の下で踏みながら言えば、呻いた颯馬を横目に南波さんがわざとらしく眉を八の字にした。 「そんなんじゃないんですけど…そだ、じゃあ南波さん先に聞いてくださいよ!」 「お、いいぜ。俺も気になるしな。」 提案した後、裕翔と颯馬と南波さんの3人でひそひそと話し始めてしまった。なんだお前らこっちチラチラ見んなよ。ガチでハブか? 話し終わった後。南波さんはふむ、と頷いて「その王道?のためにもそのイベントだけでも教えてやったらどうだ?知っといて損は無いだろ。」と言った。 颯馬と裕翔は少し顔を合わせたあと、仕方ないかと言う顔をして話し始めた。 ​───────​─────── 祝100スター!ありがとうございます! コメント、スタンプもありがとうございます ​───────​───────
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