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── side 黒河 真斗────
昼休み。自炊なんてできないおぼっちゃまの方々が食堂へ行きお食事をお召し上がりになる今日この頃。
いつも購買で食べる俺は安原に連れられて食堂へ向かっていた。せめてもと、購買へ行こうとしていた田口と岡と吉田を死なば諸共精神で道連れにしてきたのだが。
はやくはやく、と急かす安原がこの学園に来てから1番と言っていいほど興奮している。中学の頃は共学の学校へ通っていたので、腐った人間だからといって騒ぎ立てることは少なかった。
この学園に来たのが間違いだったかもしれない。同室者から延々と知らんやつの恋愛話を聞かされるこちらの気持ちになって見てほしい。軽く生き地獄だ。
「真斗には昨日話したでしょ!食堂イベントなの!」
「話してたか?嘘つくなよ」
「真面目に聞いてないからだよね?擦り付け速度ヤバくない?ウケる」
「うわ、見ろよ岡、安原のギャル真似だ」
「あっひょお!!」
「いやそれグーフィーだよ似てるなお前」
後ろで田口、岡、吉田がふざけているのは一旦無視、食堂イベントの方が気になる。
「仕方ないなあ、後ろ3人も聞いといてよ。」
と、やれやれという仕草をわざとらしくした安原に4人とも拳を構えたのは黙っておく。
「食堂イベントっていうのはね、王道において大事なビッグイベントの1つ!生徒会と王道のファーストコンタクトで、ここで落ちるかどうか決まるよ。基本は副会長が落ちてて、それに興味を持つのが始まり。そっから王道特有の、お手軽☆単純☆お悩み☆解決で惚れ落として行く訳よ。まああの王道君ならアンチだからどうなるか心配だよね。」
「あー本部君な、篠目と柴犬連れて食堂行ってたな、そういえば。」
「柴犬可哀想だったよなー、起きた途端にエンカウントみたいなもんだろ、軽くホラーだよ。」
「柴犬友達欲しかったのな……」
と、柴田もとい柴犬を憐れむ雰囲気でしんみりとふざけてみる。
「ところで柴犬の発案誰?」
聞いたのは吉田
「田口」
答えたのは岡
「お前かよ」
突っ込み俺でお送りしております。
「さあいざ!食堂へ!!」
いつの間にか到着したようで、安原が開けていいかの確認をアイコンタクトでとった後、大きなドアを開いた。
1拍。
包まれる歓声?悲鳴?に5人中3人が耳を塞ぎ、残り2人で席を確保。奥は空いてなかったのでドアの近くを選び、歓声も収まった頃3人…安原と岡と吉田が耳を解放した。
「んで外部生の黒河が慣れてんだよくそ」
「俺と同じタイミングで入学したはずなのに」
「立体音響もビックリだよここマジで」
5人で駄弁りながらタッチパネルをいじり、何を食べるか決めていく。
「俺A定食、安原は?」
「俺どうしよっかな、岡はどうすんの」
「俺ラーメン、塩ラーメンね。」
「私吉田、お好み焼きにしまっす!」
「岡ラーメンか、俺もラーメンにしよー、醤油ね。田口決めた?」
「んー俺、唐揚げ定食。」
注文するぞ、と声をかけてタッチパネルで注文確定させる。それから飯を待っている間、転校生について話を続けた。
「安原的にはどうなんだよ、本部くん。」
田口が気になったのか、安原に問いかけた。
「アンチって現実にいると精神にクるよなあって……」
「うわー、なんか分かるわ。漫画ならあういうキャラたまにいるけどさ。」
漫画好きの吉田も、思い出すように目線を上げて話す。それに同感だというように岡が口を開いた。
「俺も。一方的に上から目線で話されるの嫌でさ。嫌いっていうか…話しててストレスが溜まると話したく無くなるよなあ。」
「それをアンチくん、で片付けられる2次元ならいいんだけどさぁ。はーぁ。」
やはり皆少しは思うところがあるらしく、困ったように眉を下げて話し合う。
ちなみに俺も思うところはある。
「授業、ちょっと迷惑だったよな。」
言えば、4人がそれな!!と小さく人差し指を構えて指してきた。
「アンチくん、マジかーって感じ!」
「余計な課題増やさせるの、やめて欲しかったよな」
「ほんと、俺なんていつもふざけたら乗ってくれる先生に今日は叱られたんだよ。楽しくしようと思ったのにさー、」
「しかも結構な量だよな、今日楽しみなアニメあんのにさあ」
確かに、盛り上げようと冗談を言う岡に、いつもは笑ってツッコんだりなんなりしてくれる先生がちょっとキレ気味で注意したのは驚いた。多分1S全員ビックリした。
そういえば、と。
もう一度口を開こうとしたところで、食堂の扉が開き、甲高い悲鳴が沸き起こった。
岡が顔を顰め、吉田が溜息を吐いた。
「噂をすればって感じ?」
「あいつの噂二度としたくなくなるんだが」
入口の方へ、5人がチラリと目を向けた。
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