萬緑五月

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「塩ラーメンうんま、全人類食うべきだろ」 「は?醤油な?舐めてんの?」 「ここのお好み焼き広島焼きだわ、初めて食ったかも……うま…」 「てめえら唐揚げ敬えや」 「つべこべ言わずA定食推せ」 平和に食べ進めること、数分。 この喧嘩腰の会話が平和かと言われれば安原の頭に拳が落ちるか少食の吉田が腹一杯で気持ち悪くなるかのどちらかなので平和だろう。 兎にも角にも。 もうこのときの平和が嵐の前の静けさなのはだいたい察してたと思う。 高校1年生ながら平和が崩れるのは一瞬なんだと察したこの頃。 開かれるドア 響き渡る甲高い歓声 壊れる耳 噎せる安原 飛び散る咳に叫ぶ岡 「生徒会だ…間に合わなかった…」 親の仇を見るような目で扉方向を見る吉田が、生徒会が来たことを4人に知らせる。言葉にされるとくるものがあった。 会長を先頭に副会長や会計、書記やら庶務が並びはせず普通にでろでろと入ってくる。 まるでシガンシナ。ここはシガンシナだ。 知識は吉田からなのでこの場面以外の知識は無い。シガンシナしか知らん。 様子を見てみれば、どうやら会計を筆頭に転校生を探しており、副会長が不機嫌そうにしてる感じだった。 さあどこで逃げるか。安原にアイコンタクトをとれば、まだ様子見というような反応だった。多分。 「あーー!香苗!!」 食堂の生徒たちの間に衝撃が走る。 あの副会長を、呼び捨てにした。 新入生…更には言っては悪いが不潔感溢れるマリモの転校生によるそれはこの学園で大事件になる。 呼ばれた副会長はと言えば、これでもかと眉間に皺を寄せ、嫌そうに口を歪めていた。 そんなに嫌か、本部くん。 「あは、おもしろーい。なえちゃんのこと呼び捨てにしてんの?ウケるんだけど」 いつの間にか来ていた会計の発した言葉に、 「安原お前仲間じゃねぇか!」 と4人が安原を見れば、青ざめた顔で首を千切れるほど振っていた。 そこに響く本部s' voice。 「なんだよお前!!かっこいいな!名前教えろよ!!俺の名前も教えてやるから!!」 こいつイケメンならスーパーの店員にもこう言うのかな、とか思いながら行く末を見守る。ちなみに全員食べ終わっているが生徒会が居るため迂闊に動けない。生徒会は特殊能力持ちのボスか何かなのか。実際間違ってはいないが。 「ふぅん。俺はねえ、新見直央だよお。なおってよんでね〜」 「分かった!!なお!!!俺は本部 遙真!!よろしくな!!!」 「はるちゃんねえ、よろしく〜。ねえ、今夜どぉ?空いてるでしょ?」 マジか。もう会計の感性に俺らの目が点。 言い方は悪くなるが、どこにちゃん付け要素があるのか。フォルムか? なぜこの転校生と一夜を明かそうと思ったのか。新しい領域に目覚めたのか? 本当に新たなる世界を知るには高い勉強費だと思う。一度脳内を覗きたい。回路ショートしてんのか? 「なっ…そんなこと言っちゃダメだろ!そういうのは好きな人としかやらないって言うのが本当の愛なんだぞ!!」 少し顔を赤くしているのは見て見ぬふりするが、驚くべき事は転校生の言い分が間違っていないこと。ロマンチストとも言える考えだが、一般論で語られることとしては間違っていない。 これには田口達も目を開いていた。 この短時間で転校生についたイメージが手に取るように分かるのが恐ろしいな。 そして、それに対して心奪われたのかなんだか知らんが呆けている会計に続き、遅ればせながらもやって来た生徒会御一行。 今日も会長の顔面が煌びやかで何よりだ。 新入生にとってはまだ雲の上の上の存在。 遠くからしか見る機会がなかったので、こんなテーブル1、2個挟んだだけの距離でみれるのは貴重で少し圧倒されてしまう。 これからこのメンバーを堕とすとは、本部くんは一体なんの異能力を持っているのか。 どっちかというとデバフとも言えるが。 ​───────​─────── 更新止めてしまいすいません! なんとか頻度落ちないように頑張ります。 ​───────​───────
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