萬緑五月

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── main side ── 放課後。 昼休みの食堂事件を平井先生に報告したところ、『生徒会顧問が知ってるかわからねぇから訪ねろ』的なことを命じられたので面倒臭いが生徒会顧問を探す。 生徒会顧問の先生は、あまり交流はなかったが平井先生と同期だった気がする。あそこの2人相性悪いらしいが。 何故かって…まあ、全体的に、だ。 とりあえず職員室がある南館2階で一通り探してみてから、生徒会フロアを探すしかない。 と、渡り廊下から南館へ入った時。 「木下、ここに居たか。」 ひょこり、と前方曲がり角から声やイメージと合わない可愛い除き方をする先輩が1人。 何度か話題に上がった、西田先生だ。 「こんちは、なんか用ですかね?」 こちらに近づいてきた西田先生は、少し眉間に皺を寄せて答える。 「用といえば用だ。転校生…本部だったか。かなりの問題児だからな、話を聞こうと思ったんだ。」 まだ一日目だから早い気もするが、と付け足した西田先生は、少し上の目線から見つめてくる。恐らく、答えろという事だろう。 「まあ…見ての通り、ですね。うちの生徒は初めから言ってあるし元々穏健なタイプなので問題は無いですけど……」 思い出すのは、授業中のS生徒の困った顔と他の担任の先生からの報告もとい愚痴。 「不満はあるでしょうね。ウチが行動に出なくても必ずどこかで荒れる。あの転校生は絶対に何か起こす気はします、たった6年の勘ですけど。それと」 「それと?まだ何かあるのか」 どうやら食堂事件のことを知らないようだったので、5人から聞いたことを一通り伝える。すると、西田先生は更に眉間に皺を寄せ、顎に手をあてて少し悩み始めた。 「生徒会までもか…一日目でこれとは、先が心配だな…」 その言葉に、まだ本部が来て1日しか経っていないことに驚く。カロリー的には3日くらいあったが気がしたのだが。 「とりあえず、これからどうなるか分からないからな。よく見ておいてやってくれ。」 「うす。分かりやした」 「返事はちゃんとしろよ。」 そう言って、西田先生は中館の方へ歩いていった。生徒指導なので、恐らく放課後の教室を見て回ったりするのだろう。 さて自分もと、南館へ進む。 今ここは2階なので、そのまま職員室の方の廊下を探してみよう。 ちなみに、南館の1階は守衛さんや配達員、清掃員などの休憩室となっていて、2階が教員フロア、3階が風紀フロア、4階が生徒会フロアとなっている。 守衛さんとは、主に学園の門の開閉管理と学園内の戸締りや鍵の管理、学園外に出る行事の際には警備員と連携もとる人。 配達員は全寮制のこの学園で、外部から届く学園関係者、生徒への手紙や荷物などを管理して、その名の通り配達していく人達。 清掃員もその名の通り学園内を清掃する人だ。 職員室フロアを探しても見つからないため、別のところに行こうか、と振り向いたところ。 「お、木下く〜ん、やっほやっほ〜」 ちょうど目的の人物が手を振りながら階段から降りてきていた。格好はTシャツにジャージ。髪の毛はくせ毛気味で所々跳ねている。 生徒会顧問、林 浩太郎先輩。2S担任。 「はー最近体力無くてさ、なんで生徒会フロア4階にしたのかな。顧問のこと考えて欲しいよね〜木下くんもそう思わない?」 多分この人も三好にキレられてるんだろうなあと考えながら、林先生が手に持っている袋に目を向ける。 「その袋は?生徒会に差し入れでもしてきたんですか?」 「そうなんだよ!いや全くもう、可愛くないねあいつら。せっかく顧問がおいしいお菓子を差し入れしてやろうかといったのにさ」 話によると、普段顔を出してない為差し入れでもしてやろうかとお菓子を持っていったところ、中の空気はとんでもなく悪く、特に副会長の空気が凄かったんだとか。果てに、全員からブーイングを受けて諦めたらしい。 「ガン萎えだよほんと、あ、そうだ」 はあ〜とため息をついていた林先生はなにか閃いたようにこちらへ目を向ける。 「もったいないからこのお菓子一緒に食べない?元々生徒会に上げるもんだから量多いし他の先生探そうよ」 その提案に、この後特に用事も無いし生徒会の話も聞けると思ったので了承する。林先生はあと2人くらい誘いたいそうだ。 ならば職員室の方へもう一度行って探そうと、林先生に背を押されて足を進めた。
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