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「いや、判断早すぎだろ」
「それ納豆」
「くっさぁ」
うるさかった罰として、風紀顧問の平井から命じられた仕事を行いながら、3人は先程のことについて話していた。
仕事とは、トラックのある駐車場から広場の向こうにあるコテージへと生徒達の昼食の食材の運搬を手伝うという内容。正しくは労働である。
それぞれじゃがいも、人参、米を運びながら広場を通り過ぎる。広場とコテージの周りは森で囲まれており、学園の花壇とは違うジャンルの自然だった。
「よさーくは〜木ーをー切るぅ〜」
「「ヘイヘイホ〜ヘイヘイホ〜」」
なぜ歌い出したのかは山形と木下には分からなかったが、何となく乗ってしまう2人であった。ちなみに誰も木を切っていないし与作もいない。
「んで、話戻すんだけどさ。」
「あー、禁断の恋の話?」
「そ、なんで僕らだけ睨まれたわけ?」
そう単純な疑問から何故禁断の恋に発展するのかは分からないが、木下も普通に分からなかった。
「僕的には僕が原因だと思うんだよね!」
「俺もそう思うわ!アイシンクソートゥー!」
「以下同文」
「ここぞとばかりにさぁ!…まあいいや、んでね、やっぱ副会長でしょ!俺がほら…濡れ姿の話してたからさ、余計なこと言うな…みたいなさ!」
「うーん根拠がない、2点!乙!」
「以下同文」
「木下は評価もしてくれないのね理解した」
「価値がねぇ」
「ヒン」
意味不明な泣き真似をする三宅をさっさと置いて食材テントの方へ荷物を運ぶ。そこには、給食委員の顧問の上田匠が立っていた。
程よく日焼けした肌に、元気よく笑う姿から、生徒からも親しまれている。何より、食を愛していて料理がうまいのだ。
「お、3人ともお疲れさんでしたー!丁度そこのダンボールなおしたからそのスペースに置いとってください!」
「今日も元気がいいなあ上田!」
「山形さん米運んだんですか?いちばん重いヤツとちゃいます?」
「ジャン負け!」
「あちゃ!」
完全に関西で育ったが、この学園で働くにあたって敬語、標準語をだんだんと身につけている中間であろう話し方を聞くと成長を感じるなと思いながら、山形達は荷物を置いた。尚、上田は既に5年目である。
「あ、こっから生徒達が昼飯でカレー作るらしいんで、担任の先生方は各自生徒に作ってもらえって言うてましたよ」
「えっ!何その先生に優しいシステム!名付けて優システム!」
「黙れ三宅…あと1文字で韻踏めたな」
「酷すぎだし意味わかんなくてテラワロス」
「お前、間宅とかに改名してくんね?」
「木下疲れてるよな?早くね?」
はいはい、とくだらない話を続ける2人を引きずってクラステントへ連れていく山形の背中を見ながら、上田は1人ぼやいた。
「俺の同期もああならねぇかな……」
言ったはいいものの、同期の顔を思い浮かべ、まあ無理な話だと諦めてため息をついた。
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